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◇第64回交通安全国民運動中央大会

◇演題「幼児・子どもの交通事故防止~子どもの安全を守るための親子コミュニケーション」――日本女子大学 塩﨑尚美教授

子どもの事故防止のために親子のコミュニケーションをどのように活用すればいいか――。塩﨑さんは「飛び出し」や「チャイルドシート」を例に挙げて解説した。

■歩くのが大好きな1~2歳、「親は体が押さえられる距離に」
 自立歩行ができるようになったばかりの1~2歳は、歩くこと自体が楽しいため、抱っこやベビーカーに乗ることを嫌がるのが特徴だという。このため、歩いている時に親の静止を振り払って飛び出すことも。
 「自分の周りではなく、自分の体に意識が向かっているため、周りが見えない。そして、大人に比べてすごく視野が狭い。特に1歳の頃は、歩くことに意識が集中すると、耳からも目からの情報も入らない。この特徴を踏まえて、本当に危険なときは言葉だけでは駄目なので、体ごと押さえて危険を回避しなければいけない。すぐ押さえられる距離にいることがポイントになります」

■「イヤイヤ期」の2~3歳、「視覚で伝えて、こども自身に考えさせて」
「イヤイヤ期」の2~3歳の子どもは、手をつないだり、ベビーカーに乗ったりすることを拒否することがある。チャイルドシート未使用の場合、死亡重症率は2・7倍とのデータがある一方、子どもはなかなか乗ろうとしない。それは、交通ルールを守らせようとしても、強制されるのが嫌だからという。
 「この時期は、言葉だけの指示は理解できない。なので、目で見て理解できるように伝えることがすごく大事です。例えば、人形や絵本を使って、親と手をつながずに飛び出して車にぶつかりそうになった様子を見せる。ここで大事なのは、『この後どうすればよかったかな』と問いかけて子どもに考えてもらうこと。自分で考えると、残り方が全然違う。このひと手間が大事です」と塩﨑さん。
 チャイルドシートについては、長時間同じ姿勢を続けるのが難しいため、短めに時間を区切ってお菓子を与えたり、チャイルドシートに座っていても楽しめることをさせてあげたり先の見通しを持たせて子どもが少しずつ頑張れるようにすると、受け入れられるようになるという。

■自己主張が強い3~6歳、「親の気持ちを伝え、子どもの意思も尊重して」
 3~6歳の子どもの特徴としては、自分をコントロールする力が育つため、手をつないだり、チャイルドシートに座ったりすることもできるようになる。一方、自己主張が強くなるため、親が抵抗に遭うことも。
 「この年齢は、他者の感情や考えを理解できるようになるので、親が『心配しているんだよ』と伝えるのが大事。それは愛情の証であると感じて、素直に応じられることも増えていきます。それから、自分で決めさせる。『道路を歩くときはどうするんだっけ』とか『どこまで手をつなぐ?』と問いかける。自分の意思が尊重されていることを実感してもらうことが大事です」

■親子の信頼を土台に「双方向」を心がけて
 年齢によって対応の仕方は変わってくるが、基本は、ルールを押し付けるのではなく、「双方向」のコミュニケーションをとること。子どもにとって「自分が大切にされている」との実感が、ルールを守ることにつがっていくからだという。
 「日本人は欧米諸国のように親が素直に愛情や思いを伝えることがうまくできなかったりしますが、『すごく心配なんだよ』とか『大好きだよ』と意識して伝えることが求められていると思います」
 塩﨑さんの話は、交通ルールにとどまらず、子育て一般にも及んだ。
 「子育てはうまくいくことばかりではなく、ときには計画が台無しになることもあります。でも、その積み重ねが子育て。子どもにルールを守ってもらうこともその延長線上にあると思う。子どもの気持ちをなるべく理解して、丁寧なコミュニケーションを心がけると、子どもも徐々に自分をコントロールする力が育っていき、結果的に社会適応につながっていく。だから親は少し先の見通しを持ちながら子育てをしていくことができるといい。交通事故防止のルールを伝えることは子どもの成長を助け、自己コントロールの仕方や、自分のことを自分で考える力を育てていくと思います」

  • 第64回交通安全国民運動中央大会
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